ぼくはマスターのメダロット。
替えのパーツもメダルもあるけれど、ぼくが一番の相棒だ。
「回り込みつつ脚部を狙え。あの程度ならお前が走れば間に合わない、動きに慣れさせないようにだけは注意しろ」
「はい! ……脚部破壊、次の指示を!」
いつも怖い顔をしているぼくのマスター。
でも、どんなひとよりも、ぼくを見ていてくれる。
「この件は人間より野良に聞き込みしたほうが当たるかもしれんな。いけるか?」
「任せてください! 街近くに降りている個体を中心に調べてきます」
「よく分かってるじゃないか。 こっちでももう一度洗い直してみる、何かあったら連絡を入れろ」
ぼくは強いわけじゃない。
でも、ぼくにしかできないこともある。
「情報、集めて、きました」
「そうか。……よくやった。これなら次の手がかりになる。
次の仕事までは時間がある、お前の修復とメンテナンスをするか」
「はい、お願いします」
ぼくはマスターのために戦う。
それは、ぼくにはマスターしかいないから、じゃない。
「そういえばお前、いつの間に報告書の書式なんて身に着けたんだ?」
「こうすればマスターが読みやすいかと。 私は、あなたのパートナーですから」
「そうか。……そうだな。」
ぼくは、マスターのことが好きだから。
彼の役に立てるのなら、ぼくはいくらだって頑張れる。
「こんな夜中にどうした? メダロットでも眠れない時があるのか」
「……いえ、あー、その……、月が綺麗だったもので、見ていたくなって」
「ああ、これは確かに綺麗だな。 こんな夜は月に向かって吠えたくもなると」
「まさか! 私の身体が犬を模していても、犬になったわけじゃありませんから」
「くくっ、それもそうか」
ほんとは、もうちょっと甘えたいなって思うこともある。
同じものを見るんじゃなくて、マスターを見ていたい。
実はさっきもずっと見てたんだけどそれはないしょだ。
「マスター。余剰の機体があるのに、何故動いているのは私だけなのですか?」
「隠し玉にして万一に備えたいのが一つ。数が増えても俺が管理しきれないのが一つ。お前の機体が社会に溶け込みやすいのが一つ。
そして、お前なら相棒として、信じられるからだ」
「え?」
「二度は言わん。 仕事だ、いくぞ」
「……っ、はい!!」
優しいだけの言葉じゃなくて、それでもぼくを信じてくれる。
だから、ぼくも自分を信じられる。
マスターと共にあるぼくは、誰よりもマスターのメダロットなのだから。