top of page

メダロットはすげー金がかかる。

旧式なら一式まとめて税込五千円?そんな都合のいい在庫処分に当たることなんてそうそうない。大人だって軽率にいくつも買うなんてできない、子供ならお年玉やお小遣いをためて、他の欲しいものを我慢して、ようやくパーツ一式を買えるかどうかってところだ。故障したり不具合が起きたとき用に予備パーツもほぼ必須だ。メダルはいいとしても最低でも二体分は買わにゃならん。

しかもロボトルに負けたらぶんどられる、冗談じゃない。勝った奴はどうせ死蔵するくせに何が悲しくて必要なものをくれてやらなきゃいけないのか。

買ってはい終わり、じゃない。メダロットは機械だ。メンテナンスを欠かしちゃならない。普通の機械と違って多少は自分で直ってくれるが、もちろん全部なんとかなるわけじゃない。勝手に動くからこそいらないサポートが必要になることもある。

汚れを拭く布、関節部に差す潤滑油、分解しなきゃいけない時には工具もいる。修理に出すまでもないけど手直ししなきゃならない、なんて損傷をした時のために細かい部品もないといけない。必要なものは多岐に渡る。機械系の趣味か仕事でもあれば流用できるんだろうけどもちろんそんなことはない。メダロットのためだけに用意しなければいけないのだ。

さらにさらに、奴らはただの機械じゃあない。意志と心を持つ人間のお友達、なもんだから大変だ。

新しいパーツが出れば欲しいとねだられる。男型ならかっこいいマークを入れたいだのステッカーを貼りたいだのとせがまれ、女型なら艶出しやカラーリングの塗料やちょっとしたアクセサリーなんかの小物に興味を持ったりする。変に色気づくもんだからこっちの財布は延々と金を搾り取られ続ける。

趣味なんか見つけられた日には目も当てられない。

紙やクレヨン程度なら可愛いもんだ。ゲームに興味を持てばやれ一緒にやりたいからコントローラーが欲しいだのやれ自分にも携帯機をくれだの、本に目を引かれればこっちが読みもしないジャンルのものを持ってきて見上げてくる。一人分のものだけで済んでいた根城はあっという間に自分のじゃあない雑多なもので埋まっていく。そこに今までののびのびした自由なんかありゃしない。

人ひとりが生きていくよりマシとはいえ、あいつらは立派な金食い虫だ。金だけじゃない、時間も労力も貪って、人間がひぃひぃ言ってるのをまるでわかっちゃいねえ。それが当たり前だみたいな面してふてぶてしく生を謳歌してるんだ。メダロットが普及していて、みんな持ってるからって考えなしに買えばもれなく休まらない日々が始まる。頑張れば手に入る、なんて最高のトラップだ。

あんなもん軽率に手を出していいわけなんかないんだよ。

「……あれはメダロットへのヘイトスピーチか何かなんですか?」

「いんやぁ、あいつあれで自分のメダロットのこと溺愛してるから。ディスってるようで遠回しに自慢と自分語りしてるんだよ」

「それは……普通に言えば……いいんじゃないですかね……?」

「どこにでも素直になれないひねくれ者はいるってこったな。ああいうのもひとつの愛のカタチってやつだよ、多分」

​メダロットと生きるということ のはなし
bottom of page