「おーい起きろー。もう朝だぞー」
「……んー……ぅー……」
「どうした今日は寝起き悪いな。こーらー起きろー」
「んぐ……いだい……」
「そんなに強くゆらしてな……………………あ?」
「あれ、おはよ……?」
「うわああああああああああっ血!!! おまっ、血が!!!!」
「ひゃあ!? わ、わ、え、あ、うわっ!!これ、わぁ」
「怪我したのか!?……寝てる間に怪我ってなんだ!?とにかく誰か呼んでくる!!」
「わああああ待って!待って!!ちょっと待って!!!お願いだから待ってこれ怪我じゃないから!!!!」
「いやおまっ、そんなに血が出ててヤバくないわけないだろ!?」
「あっ、あー、あーーーーーせつめいできないよこんなの!!とりあえず私より年上の女の人誰でもいいから呼んできて!!男の人は絶対ダメ、いい!?」
「は!?なんで」
「いいから!!お願い!!!」
「……お、おう、待ってろ!!」
「誰かいないかッ!!」
「おうおうなんだ朝っぱらからうるせーな頭に響くわタコ。こちとらオールで調子クソなんだよだぁってろ」
「! お前でいい!今すぐ来てくれ!!」
「はぁ? 何? ガラスでも割った?」
「あいつが怪我したんだ!血が出てる!!」
「…………え、マジで割ったん? どんな風になってんの」
「起こそうとしたらなんか調子悪そうで、布団めくったら中ですごい量の血が出てたんだ!!」
「あぁん? ……もしかしてそれ、血が出てたところって下半身のあたりじゃなかった?」
「そう、だったかもしれないけどわからない! とにかくあんな風になってたらマズいのはオレでもわかる!!」
「オーケー、オーケー。アタシが様子見に行ってくる。 あんたは……そうだね、しばらくここにいな。気になるかもしらんけど見に来ないこと、わかった?」
「なんでだよ、あんなの放ってなんて」
「い い か ら 。 あと誰かと会ってもこのことを他の奴に言わないように。調子悪いんだーくらいならいい。
もし喋り散らかしたらあんたのメダルぶっ壊して川底の砂利にしてやる。あの子が止めてもやるからな」
「……お、おう……。大丈夫、なんだよな?」
「断言はできないけどたぶん平気よ。そんな不安そうな顔するんじゃねぇっての。 んじゃ、ちょっくら見てくるわ」
「……頼んだ。」
「で、なんで風呂になんか入れてるんだよ。 あんなに血が出るような怪我してる時に風呂に入るのって良くないんだろ?」
「今回は必要通り越して入れないと酷だったもん。 あ、アタシの予想通りだったから慌てんでも大丈夫よ、ありゃ怪我じゃない」
「怪我じゃなかったらなんで血が出るんだよ、なんにもなくて出血するなんてあるわけないだろ」
「ああー………………これさあ教えたほうがいいやつ?」
「教えろ! あいつに何が起こってるんだ!!」
「嘘だろロボ相手に保健体育の授業かよ……世の女の子方はうまいことと隠してんのかね……いやまあ普通に行けるか……。
まず端的に言えばあれは人間として正常な生理現象だ。怪我でもなんでもない、むしろめでたいくらいだわ」
「は…………?」
「これからざっくり説明するけどかなりデリケートなモンだから他の奴に喋ったりするなよ。
もうちょい言うとあれは体が大人になったしるしだ。世の中の女性は大抵ああいう風に血を流すし、それが自然なんだ」
「嘘だろ、あんなのが普通にあるわけない。布団が真っ赤だったんだぞ」
「それがあるんだよなあ。ありゃあな、子供が作れるようになった女の子に月にいっぺん来るやつだ。生理とか、月経とか……生々しいし月のものって言った方がマシかなァ」
「……あいつはまだ子供だ、子供が子供を作れるわけないだろう?」
「可能か不可能ならもう可能なんだよ。あ、ほんとに絶対他の奴にこのネタ喋んなよ。せめて女型になってもうちょい勉強してからな。
なんて言うかなあ、これから毎月身体が勝手に子供をつくる準備をして、もういらなーいってなったら準備してたやつが血になって流れ出てくるんだ。クッソめんどいけど人間ってそういう生態してんの、女ってそういう身体になってんの。アタシもだぞ」
「つまり、生殖のためにあんなことになると?」
「まーそーねー。あの子ほっそいからもうちょい後に来るかと思ったんだけど。あんたに見られて良かったんだか悪かったんだか」
「……体を悪くしたのでないなら……怪我とか病気とかでないのなら、よかった。」
「あら殊勝。まぁ血ィ出るもんだし調子は悪くなったりするから、できたら気遣ったり優しくしてやんな。あんまり直接的に触れない程度にな! お外でペラペラ喋る類のモンじゃあないし、迂闊に直接口に出したらデリカシー皆無野郎のレッテル確定だかんね」
「それはもう何度も聞いた」
「何度も言って言いすぎじゃないから言ってんの。まあこんなんだから男共に理解無い奴が割といたりすんのかもしらんけどね……。いややっぱメダロットにはいらねぇだろこの知識。
おっと……ん、もう大丈夫だってさ。部屋戻っていいぞ。 あの子もいろいろあって動転してるだろうから優しくしてやんなよ」
「ああ、ありがとう。 正直かなり助かった、お前がいなかったら多分何もできなかったと思う」
「よせやいキャラじゃねぇ。なんか不安なことあったらアタシに相談しろって伝えといてくれよな」
「……なあ」
「なにさ?」
「……子供ができるようになるってことは……あいつは、いつか誰か……人間の男と結婚して、そいつと子供を作るのか?」
「すごーい普段なら笑い飛ばせるけど全然そんな雰囲気じゃねえ。 さあねぇ、現にアタシだって別に男とかキョーミないし。結局のところそいつ次第だと思うぜ」
「そうか。……そう、なんだな」
「情緒忙しいなあんた。 別にィー、普通とは違う着地点に落ち着いてもいいと思うけどねー」
「……? どういう意味だ?」
「保健の教科書と一緒に小説でも読めってこったよ。 ほら行った行った、いつも通りに、できればちょっとは優しくだぞ、いいな!」
「ん。ああ、行ってくる。」
「……近しいが故の嫉妬か不安なのか、それとも別のもんだかわかりゃしねぇな。 ま、あの子らがしあわせならなんでもいいけど。」